横田酒造の酒造り(2)

(5)酒母造り


酒母(しゅぼ)づくりでは、製麹で作られた「麹」と、「蒸米」、「水」を混ぜ、そこに「日本酒酵母(こうぼ)」を植えつけて造ります。本仕込みの前の準備段階の仕込みです。なお酒母(しゅぼ)は、「酉」に「元」と書いた字で”モト”と、よく呼ばれます。 この工程により、「日本酒酵母」が大量に培養されることになります。この酵母を培養する過程では、雑菌類が入ってきますが、これは乳酸の働きにより退治します。乳酸の生成は、 酒母づくりの段階で自然の中から乳酸菌を取り込んで生成する「生モト(きもと)」造りと、事前に準備した乳酸を加える「速醸モト(そくじょうもと)」に分けられます。

現在は、 生モトはほとんど無くなり、明治時代に開発された速醸モトが主流になっています。
「速醸モト」の良いところは、酒母造りを二週間程度に短縮できること、 一般にのど越しの良い酒になることです。(「生モト(きもと)」造りには、モト麹、掛米、モト水を混ぜてすり潰す重労働である”山卸し作業”を省略した「山廃モト」もあります。)

(6)仕込み


酒母(しゅぼ)ができると、大きなタンクに移して仕込みに入ります。酒母造りと同じように「麹」「蒸米」「水」を加えて行きますが、今度は三回に分けて加えて行き、「もろみ」を造ります。これを「三段仕込み」と呼び、それぞれ「初添(はつぞえ)」「仲添(なかぞえ)」「留添(とめぞえ)」と言います。 三段仕込みの目的は、酵母の濃度が薄くならないようにして雑菌に汚染されないようにするためで、この方法で安全な発酵を進めることができます。この工程では、麹カビが蒸米のでんぷんを「糖」に変え、「糖」が酵母の働きにより「アルコール」に変化していきます。これが世界でも類の無い「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」です。写真は、櫂入れ(かいいれ)作業の様子です。「もろみ」を攪拌するもので、朝晩に行います。


タンク内の様子です。大吟醸の「もろみ」の発酵日数は、およそ一ヶ月程度ですが、これも酒蔵によってまちまちです。

(7)上槽


上槽(じょうそう)とは、出来上がった「もろみ」を搾って(しぼって)、いよいよ清酒と酒粕(さけかす)に分ける作業です。横田酒造では、上槽に、「連続搾機(れんぞくしぼりき)」「槽搾り(ふねしぼり)」「しずく搾り」を、お酒によって使い分けています。左の写真は、手にした手桶(おけ)に「もろみ」を分けているところです。この手桶の中に分けられた「もろみ」をすぐ酒袋に移します。


「槽搾り(ふねしぼり)」の準備として、ひとつひとつの袋に「もろみ」を分けて入れたものを、槽(ふね)に丁寧に並べているところです。


槽搾り(ふねしぼり)の最後の準備です。このあと上からゆっくりと圧力をかけて(圧搾:あっさく)もろみを搾ります。吟醸酒などの高級酒は、手間を惜しまずに、この搾り方を採用しています。


搾られたお酒が、槽口(ふなぐち)から少しずつ出てきます。それを斗瓶(とびん)に取って行きます。このお酒は、いわゆる無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)で、残念ながら蔵でしか飲めません。写真は蔵人が斗瓶を入れ替えたところです。


写真は、次の「しずく搾り」のため、槽搾り(ふねしぼり)と同様に「もろみ」を袋に詰めているところです。「しずく搾り」は、圧力をかけて搾る「槽搾り(ふねしぼり)」とは異なり、タンクの上に「もろみ」を分けて入れた袋を吊るした後、布目から自然に滴る(したたる)お酒だけを集める、手間と時間をかけた贅沢な搾り方です。自然に落下させて搾るので、袋の中にはまだ多くのお酒が残ります。


にこにこしながら、「しずく搾り」の準備をする高橋杜氏。かなりの手間をかけた準備が必要とする作業ですが、杜氏の手により愛情が込められたお酒が絞られます。鑑評会出品酒はこの「しずく搾り」で造られています。


普通酒に使われる、「連続搾機(れんぞくしぼりき)」です。油圧で横方向に圧力をかけて、お酒を絞ります。じゃばら状の間に、酒粕(さけかす)が溜まります。これは手作業で剥ぎ取られます。なお最近では、酒粕の出ない醸造方法もいくつか開発されており、酒粕もより貴重になってくるかも知れません。

(8)滓引き/濾過


上槽(じょうそう)直後の清酒には、細かな粒子が残っています。ここでタンクに数日間そっと置いておくと、粒子は底部に沈殿して上側が澄んできます。その上澄みを取り出して、底部に沈殿した滓(おり)と分けることを、「滓引き(おりびき)」と言います。
そこからさらに濾過機に通して、より清澄(せいちょう)にします。写真は濾過の作業です。

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